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患者さんからいただいた言葉

  • 2025年6月28日
  • 読了時間: 2分

ある日、全身性エリテマトーデス(SLE)で治療中の女性患者さんが診察に来られました。年齢が近かったこともあり、彼女とはいつも世間話に花が咲き、診察室は穏やかな空気に包まれていました。病状は比較的安定しており、特に大きな問題はないように思えました。

しかしあるとき、「微熱が続いているんです」と相談されました。血液検査をすると、炎症反応がやや高め。SLEの活動性が高まっている可能性も否定できず、念のため全身のCTを撮ることにしました。

映し出された画像には、多発性の転移所見がありました。彼女には過去に泌尿器系と婦人科系の悪性腫瘍の既往があり、いずれかの再発が疑われました。最終的には婦人科系腫瘍の終末期と診断され、入院することになりました。

彼女の余命が限られてきたころ、私は病室を訪ねました。いつものように、彼女は明るく微笑みながら迎えてくれました。そして、ふと口にしたのです。

「先生の診察を受けていると、自分が患者でいることを忘れられたんです。」

その言葉は、私の胸に深く響きました。医師として、私は彼女の命を救うことはできませんでした。もっと何かできたのではないか、自分の無力さを感じずにはいられませんでした。

けれど、その言葉を何度も思い返すうちに、少しずつ気づいたのです。私は彼女に医学的に大きなことはできなかったかもしれない。でも、診察の時間が彼女にとって「患者であることを忘れられるひととき」だったのなら、それは彼女の心の苦しみを和らげる小さな支えにはなっていたのではないかと。

病気を治すことが医師の仕事のすべてではない――そう教えてくれたのは、彼女でした。患者さんの心に安らぎを届けることも、医療の大切な役割の一つなのだと、今ではそう信じています。

 
 
 

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